以前から五重(三重)の塔には、地震時に倒れない秘密の構造に成っていると聞き及んで久しい。実際昔から倒壊例は無い。不思議で在る。大層興味も在るが、重要文化財等で内部に容易に入れず、構造を調べる事も出来ず、今日に至っている。しかし、急にどうしても知りたくなり、近年(昭和五六年)に再建された、奈良の薬師寺西塔へ行き、その再建資料を見せて貰えるかも知れない(頭を下げれば)と、取り敢えず薬師寺へ、車を飛ばした。
薬師寺の東塔は飛鳥時代の様式をとどめ、平城京遷都の折り移築された一番古い塔であろう。白鳳建築を目の当たりにし、向かい合う其の西塔が再建、東塔を写し、創建寺の姿を再現されたと言う。三重(五重)の塔の地震に倒れない構造を知りたいと尋ねると、棟梁の復元記録『蘇る薬師寺西塔』が良いと教えられ購入した。早速、目を皿にして読み、又、写真も有り、其の耐震の秘密とは、四天柱はどうか、基壇は等及び、構造を追いましたが秘密らしき物は見つかりません。しかし一点「アッッ」と声が出ました。それは、塔の尖端に立つ、青銅製と思われる九段の宝輪や水煙まで、塔の心柱が塔を貫き、その心柱が相輪までも貫き水煙金具が尖端にかぶせられているのです。知らなかった、驚きである。調べて見ると、塔の心柱(四段)が上に行く程細くなり、尖端の相輪部の第四心柱は地震の時、其れがムチの様に振れて揺れを吸収する論理が有力説であると言われている。其の根拠の一ツとして層輪(宝輪八~九段)の尖端心柱、根本部分で折れた例(東寺)が興味を持たれて居ます。要するに日本古来の伝統で在る掘立柱建築の名残、重層構造(実は平屋建)と相まって、所謂(いわゆる)「スネーク・ダンス」が尖端から起こり、上から全体を包み制震する。此処に木造建築耐震の秘密「キーワード」が在るのでは。(上代)
その2、に続く。
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