「木遣り研究 其の⑨ 釿始めの儀での背景様子」

 「木遣(きや)り研究 其(そ)の⑨ 釿始(ちょうなはじ)めの儀(ぎ)での背景様子(はいけいようす)」 木遣(きや)り音頭(おんど)は太古(たいこ)よりの口遊(くちずさ)みで木曳(きび)き唄が杣(みそまやま)よりの木曳(きび)き音頭、目出度(めでた)い祝(いわ)い歌と成り、五重塔の心柱(しんばしら)、柱立(はしらだ)て式の祈り境内(けいだい)を皆で曳(ひ)き練(ね)り歩いたのが初めで在る。
 寺の本殿前に於(お)いて正月2日、釿始(ちょうなはじ)めの儀(ぎ)が行われますが、あくまでも神前で行って居る。明治よりの廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)で神道(しんとう)と仏教は分(わ)かれるが平安京を遷都(せんと)した桓武(かんむ)天皇より空海(くうかい)は唐(とう)に渡り大日如来(だいにちにょらい)の神仏習合(しんぶつしゅうごう)に依り、日本は救われ釈迦如来(しゃかにょらい)を超(こ)えた大宇宙の太陽神、天照大神(あまてらすおおみかみ)と大日如来は習合する。
 釿始(ちょうなはじ)めの儀、中世以前の上棟式(じょうとうしき)を再現するのか黒い作業服の鳶職(とびしょく)の人達が並び式衆(しきしゅう)は先ず棟梁役(とうりょうやく)で神主(かんぬし)の装束(しょうぞく)、続く番匠(ばんしょう)の宮大工は神職(しんしょく)の衣装で行事姿(ぎょうじすがた)の者が祭壇(さいだん)の奥より差し金(矩尺(かねじゃく))、墨挿(すみさ)し、墨壺(すみつぼ)を手渡(てわた)す。何故(なぜ)か侍姿(さむらいすがた)の脇司(わきつかさ)は道具を運ぶ。又、古来(こらい)の宮大工の姿で小司(こつかさ)が釿(ちょうな)と遣(や)り鉋(がんな)を運び、番匠の手元(てもと)を務(つと)める。静寂(せいじゃく)の中、雅楽(ががく)の調(しらべ)と伴(とも)に執(と)り行われる。小生(しょうせい)も毎年加わり努めて居りますが、小司(こつかさ)役が大変気に入って居り出番も多く神との気配も近く感じる。寺院の境内で御幣(ごへい)に囲(かこ)まれ、最後に拍子木(ひょうしぎ)に合わせ、小節(こぶし)を効(き)かせ声高らかに木遣(きや)り音頭は唄われる。(上代)
           「売上げは最大に、経費は最小に」