「西洋伝統建築の暖炉と竪穴式住居、囲炉裏の対比」

 「西洋伝統建築の暖炉(だんろ)と竪穴式(たてあなしき)住居、囲炉裏の対比(たいひ)」 西洋伝統建築の暖炉(だんろ)は日本で余(あま)り目にする事は在りません。暖炉(マントルピース)と言うものは長い歴史に培(つちか)われた暖房設備で在る。暖炉で一番大切な処は、其(そ)の吸気システムに在る。詰(つ)まり、暖炉の炎(ほのお)の熱に拠り暖(あたた)められる暖気(だんき)が奪(うば)われず、煙道の煙の上昇気流から暖気熱を保(たも)つのです。暖気を奪われて炎の放射熱のみでは部屋は暖(あたた)かくは為(な)りません。要するに暖炉から離(はな)れた入口等の冷気、温(あたた)まり難(にく)い離れた処での吸気の為(ため)に壁の空洞(くうどう)に引き入れ暖炉煙道上昇気流の吸気に充(あ)てて冷気を排出し暖気を蓄(たくわ)え部屋を暖めるのです。故(ゆえ)に暖炉に吸気システムは欠(か)く事は出来ず、言い換(か)えれば、暖炉とは吸気システムを指(さ)す。
 其処(そこ)で、日本の竪穴式(たてあなしき)住居の囲炉裏(いろり)と、どう関係が在るのかと言うと、竪穴(たてあな)式住居の堀下(ほりさ)げられた(70cm位(ぐらい)の作業台の高さ)周提側面(しゅうていそくめん)に葦簾(よしず)が立ち覆(おお)い囲(かこ)み、土間に茵(しとね)と呼(よ)ぶ敷物にて座(すわ)り凭(もた)れるので在るが、中程(なかほど)に囲炉裏(いろり)が在り草葺(くさぶき)の伏屋根(ふせやね)が架(か)かる煙抜きも上部に設(もう)ける。暖気は堀下げた周提(しゅうてい)高の中に溜(た)まり、冷気の吸気は周提上の伏屋根の隙間(すきま)から入り煙と共に上昇し、排煙(はいえん)されるので在る。竪穴式住居の生活は「頭寒足熱(ずかんそくねつ)」だと言える。(上代)
           伝統の根源へ遡(さかのぼ)る。