『京町家』のお話。其の26 神話にて、都は葦の茂る地へ。

 其(そ)れで泥濘(ぬかるみ)、葦(よし)の生い茂る湿地帯に何故(なぜ)、農耕での地に都(みやこ)を造るので在ろうか。神話の一節に「天地の分かれた時、未(いま)だ土壌(どじょう)は泥土(どろつち)の様に固(かた)まらず此の時、葦芽(あしかび)の様なものが勢いよく萌出(もえい)で固まり大地と成った。」と伝(つた)いし、葦(よし)に拘(こだわ)るのか。
 日本でも太古は、天と地が分(わ)かれず、天が徐々に上昇し今日の高さにと伝う。国土形成の過程は、葦の茂る湿地帯を固成(こせい)化する事で杭(くい)の働きが極(きわ)めて重要。「天地が初めて開かれた時、高天原(たかまがはら)に現(あらわ)れ出(い)でた神々の名は、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)、次は高御産巣日神(たかみむすびのかみ)、神産巣日神(かんむすびのかみ)、此の三柱(みはしら)の神で在った。皆、独(ひと)り身で姿形(すがたかたち)は現さず。」天之御中主神は天の中枢(ちゅうすう)に在るべき根本的な神と言う意味で、神話に依れば、此の世に初めて現す天の成生の徳とも言うべき神格と伝う。他の二柱(ふたはしら)、産巣(むす)、即(すなわ)ち創造生成の働きを神格化したもの。(古事記)
 伊邪那岐命(いざなぎのみこと)、伊邪那美命(いざなみのみこと)の二神は此の漂(ただよ)える国を固成せよと天神(あまつかみ)から命ぜられ賜(たまわ)った「天沼矛(あめのぬほこ)」を持ち天浮橋(あめのうきはし)に立ち矛(ほこ)を指(さ)し下(おろ)し掻(か)き鳴(な)らし島は出来、二神は其の島に下り、天之御柱(あめのみはしら)を立て、八尋殿(やひろどの)(地上)を造り、大八洲(おおやしま)(日本列島)、天照大神(あまてらすおおみかみ)、月読命(つくよみのみこと)、須佐之男命(すさのおのみこと)を産む。(上代)
           今日も一日、笑顔で全力投球。