父親の気持ちが、やっと分かった、と言うお話。

 想うに、大人に成れば子供達に、何に為りたいのかと問う場合、決して貶(けな)すのでは無く、褒めるが肝要で在ると。子供の可能性を引き出し、応援するのが大人の務めなのか。
 私が小学生から中学に上がる頃に内の父親が大人に為れば、何に為りたいのか、と聞くものですから私は何を思って居たのか、突拍子も無く、「弁護士」に為りたいと答えました。すると、父親は「そんなもの為れるか、」と言いまして、「それなら聞くな」と思い、やはり本人、傷付きまして其れまで余り勉強もして居ないし、宿題に至っては記憶に無く居残りが常習で在ったが、然し、『そうか、相当ガンバら無いと、いかんねえ』位の事は、言って欲しかった。
 以後、私は父親とは余り口も利かず口喧嘩ばかりして居ました。父が亡くなりまして十数年経ちますが、最近漸(ようや)く、父親の気持ちが分かって来ました。私には、子供が居りませんので、理解するのが遅れたのか。家業が親父が創めた工務店で、然るに私は大工を嫌がり別の方にも考えても居ました。現在は二代目です。長男の私には大工に、工務店を継いで貰いたかったのだと気付き、父親の気持ちが、あの時の気持ちが今頃に、やっと分かりました。(上代)
              未々だ、お話は、続きます。